前回のコラムでも少し触れましたが、専業主婦がいる家庭を望む人の割合が4割程度あるそうです。そのような家庭にとっての最大のリスクは唯一の働き手である夫が亡くなってしまうことでしょう。
「旦那が亡くなっても貯金や賃貸収入だけで十分食べていけます。」という資産家の方なら良いのですが、そんな蓄えがない場合、残された家族はたちまち路頭に迷うことにもなりかねません。
生命保険というのは、本来こんな破滅的リスクをヘッジするために生まれたものだと思います。
ところが生命保険というのはいろいろな使い方ができるもので、医師の先生方ならご存じかもしれませんが、節税ツールとして使われることもあります。
死亡保険金は相続財産とみなされて相続税の課税対象になります。ですから課税もれがないように、保険事故が発生して保険金が支払われると保険会社から税務署に支払調書が提出されます。誰が保険金を受け取ったか、自動的に税務署に情報がまわるというわけです。
ところが保険事故が発生する前に保険の契約者を変更した場合には、支払調書が発生しないため税務署は契約者変更の事実を知ることができません。そのあたりの事情をうまく利用して節税(というより脱税ですが)するというスキームがありました。
税務署に事実がバレないから課税されない、という脱税行為ですのでその手法についてはあえて書きません。しかし国税庁もいつまでもそのような状態を放置しているわけもなく、平成27年度税制改正大綱に改善策が盛り込まれることになりました。 今後は支払調書に契約者変更に関する事項が記載されるようになりますので、税務署がその事実を把握できるようになります。
今回の事例に限らず、保険を使った節税商品は法改正のリスクと背中合わせです。保険を解約するなどして損することなく規制を逃れることができれば良いですが、そうでなかった場合でも保険会社は損失補填をしてくれません。
「節税商品」と聞くとついつられそうになることがあるかもしれませんが、安易に手を出すと痛い目にあうこともあります。お気をつけください。
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昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。