敬語を正しく使うのは難しいものです。最近耳にして違和感があった言葉に「ゴリコン」というのがあります。カタカナで書くとなんのことかわからないと思いますが、漢字で書くと「ご離婚」。「離婚」に「ご」をつけるというのはなにか違うように思うのですが、みなさまはどのように感じられますか?
というわけで、今回は「離婚」がテーマのお話です。みなさまにはあまり縁がないお話かもしれませんが、どこかで話のネタくらいにはなるかと思いますのでおつきあいください。
離婚する際に問題となるのが財産分与。婚姻期間中に築いた財産は夫婦共同の財産ということになっていますので、たとえすべての財産の名義が夫(または妻)になっていたとしても、それぞれの貢献度に応じて財産を分配しなければなりません。税務上問題になるのは、この財産分与によって夫婦の一方から他方に財産を与えるという行為が贈与税の課税対象になるかどうかですが、離婚に伴う財産分与については贈与税の対象にはなりません。(ただし偽装離婚などの場合には課税されます)
ということで、もらう側には課税関係は生じないのですが、あげる側は課税される場合があります。それは、自宅などの土地建物を財産分与した場合です。
土地建物のように譲渡所得の対象となる資産は保有期間の値上がり益に対して課税されるのですが、いつ課税されるのかというとその資産を手放す時に課税されます。そして財産分与は相手方の「財産分与請求権」を対価とした譲渡だとみなされますので、時価で売ると利益がでるような物件の場合には譲渡税が課税されてしまうのです。
そこで、そのような時にどうすれば課税を逃れることができるのかを念のためにご説明しておきます。
一つ目の方法は、「居住用財産の3,000万円控除」を使うというものです。この特例についての詳細な説明は省きますが、ご自宅のように自分が住んでいた土地建物を譲渡するときには、売却益から3,000万円を控除することができるというものです。売却益3,000万円までは譲渡税がかからないという太っ腹な特例ですので、これを使わない手はありません。
ただし注意事項があります。それは、この特例は「配偶者などの特殊関係者に譲渡」した場合には使えないということ。ですからこの特例を使うためには先に離婚を成立させてから財産分与をしなければなりません。また、この特例を使って譲渡税が0円になる場合でも確定申告は必ずしなければなりません。
もう一つの方法は「贈与税の配偶者控除」を使うというもの。これは、婚姻期間20年以上の配偶者から居住用財産の贈与を受けた場合には、贈与税は課税されますが2,000万円の特別控除が受けられるというものです。(贈与した自宅の時価が2,110万円以下であれば贈与税額は0円)
もらう側は財産分与でもらえばもともと非課税なのですが、あげる側が課税されるのを避けるためにあえて財産分与ではなく贈与にしてしまうという方法です。こちらの方法を使うときの注意点は、贈与は離婚“前”に行うということ。また、もらう側は贈与を受けた後も引き続きその自宅に住み続けなければなりません。こちらも確定申告が必須ですので忘れないようにしてください。
離婚の際にも税金がついてまわるということ、そして、財産分与の仕方でその税金の額が大きく変わってしまうということ。なにごとも備えあれば憂いなしと言いますので、今回のお話しも頭の片隅に置いといていただければと思います。
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昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。