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印税収入を事業所得にしたらトクする場合

いよいよ今年も確定申告のシーズンがやってまいりました。医師のみなさまもそろそろ領収書の整理を始めなければとうんざりされている頃かもしれませんね。

医師のみなさまならすでにご存じだとは思いますが、原稿料などの収入は「雑所得」として申告します。それでまちがいはないのですが、今回はそれを「事業所得」にすることができたらどんなメリットがあるのかをお話します。

売れない本が商売になる?

本日ご登場いただくのはサラ金の過払い金請求でかなりお稼ぎになったやり手弁護士さんです。この弁護士さん、過払い金請求だけでは飽き足らず、出版社と契約して「弁護士がコッソリ教えます!借金地獄から抜け出す3つの方法」という本を出版しました。

いくら弁護士とはいえ無名の新人が出した本などそう売れるものではありません。しかしそこはやり手の弁護士さんのこと、赤字覚悟で全国紙に自腹で広告を打ちました。

それでも本はたいして売れなかったのですが、広告を見た人から債務整理などの依頼が急増しました。印税収入と広告費を比べたら大赤字なのですが、本業の売上が大幅にアップし結果的に本の出版は大成功となりました。さすがやり手の弁護士さんです。転んでもただでは起きません。

赤字は切り捨て!?

確定申告の時期になりました。印税収入は通常「雑所得」になるのですが、「雑所得」の赤字は他の所得と通算できず切り捨てられてしまいます。

簡単な数字を入れて見てみましょう。印税収入が50万円、広告費が300万円だったとすると、雑所得の金額は、
  50万円 - 300万円 = △250万円
といいたいところですが、赤字は切り捨てますので雑所得は0円になります。

もし事業所得とすることができれば、この250万円の赤字は本業の所得に吸収されますので、雑所得として申告する場合とくらべ所得金額を250万円少なくすることができます。250万円の差は大きいです。やり手弁護士さんはあえて事業所得として申告することにしました。

事業所得として認められるためには

実は、講演料や印税収入、原稿料などの収入であっても、

  • その講演等が弁護士の立場で行われた、あるいは、その内容が弁護士としての知識や経験に基づくものであって、
  • 本来の弁護士の職務と直接の結びつきが認められるもの

は事業所得に係る総収入金額に含まれる。という国税不服審判所の裁決があります。実は今回のお話しはこの裁決をアレンジしたものなのですが、今回のようなケースでは印税収入とそれに対応する必要経費を事業所得として申告することができるのです。どちらの所得として申告するかだけで納税額に大きな違いが出るという興味深い事例でした。

ちなみにこの事例、医師のみなさまにも応用ができそうなのですが残念ながら医師として事業をされている方(開業医など、事業所得の申告をされている方)でなければ使えませんのでご注意ください。

酒井税理士事務所代表 酒井 勇(税理士登録 第102393号)

住所: 大阪市西区南堀江1-2-6 サムティ南堀江ビル8階
HP: http://www.sakai-tax.jp/

経歴

昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。

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