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影響を受けるのはアマゾンだけ!?電子書籍と消費税の課税について

電子書籍といっても数年前までは著作権切れの古い書籍を電子化した青空文庫くらいしか読むものがなかったように記憶しているのですが、最近の電子書籍の充実ぶりは目覚ましいものがありますね。もちろんすべての書籍が電子書籍で読めるわけではないのですが、実際の本とちがってかさ張らないし、自宅でクリックすればすぐに読めるということもあって最近はもっぱら電子書籍で本を買うようになりました。

ところでこの電子書籍や音楽配信サービスについては配信元が国内か海外かで課税の不公平がありました。国内事業者(紀伊国屋など)が電子配信すると消費税がかかるのに、アマゾンなどが国外から配信すると消費税がかからないのです。すでにいろいろなところで報道されていますが、なぜそうなるのか意味がわかりづらいという意見が意外に多かったので、改めて税法に基づいて解説したいと思います。

消費税とは、「国内」で事業者が行った物の販売、サービスの提供などに対して課される税金です。ここで注意して頂きたいのは、「国内」で行われた販売やサービス提供についてのみ課税される税金だということです。ですから輸出する場合には消費税はかかりませんし、身近なところでは海外への航空運賃についても消費税はかかりません。それぞれ販売する場所やサービスの提供を受ける場所が「国内」ではないからです。

では、電子書籍や音楽配信サービスはどこで行われているのでしょうか?日本に住む我々が購入するのだから「国内」と言いたいところですが、アマゾンなどは海外のサーバーから私たちにコンテンツを送ってきます。ということは、海外でサービスが提供されているともいえそうです。

このようにサービスの提供が行われた場所が明らかではない場合、現状では「サービスを提供する者の事務所の所在地」が国内にあるかどうかで判定することとされています。アマゾンの電子書籍はAmazon.com Int’l Sales, Inc.というアメリカにある会社が販売しています。ですから「国内」取引ではないと判定され日本の消費税は課税されない、という理屈になっていたのです。

しかし上述のように、それでは国内事業者は価格競争の点で大きなハンデを背負うことになります。ましてや消費税率が8%に上がり、さらには10%にまで引き上げようかという中で、さすがにこの問題を放置しておくことはできなくなったのでしょう。平成27年度税制改正大綱でようやくこの問題が解決されることになりました

具体的にどうしたのかといいますと、「国内」取引と判断する基準を「サービスを提供する者の事務所の所在地」から「サービスの提供を受ける者の住所地等」に変更することにしたのです。こうすれば、販売元が海外の会社であってもサービスの提供を受ける者は日本にいますので、「国内」取引として消費税を課税することができるというわけです。

条文を根本から作り直さないといけないような大改正が必要だったのならまだしも、たったこれだけの変更で何百億円という消費税額が国庫に入るのですから、なぜ今まで放置していたのか不思議です。この規定を作った時点では電子書籍などというケースを想定していなかったということは理解できますが、それにしてももっと早くに対応できたのでは?と思います。

ところで、この消費税法のある意味抜け道を使っていた代表的存在としてアマゾンの名前をあげてきましたが、実は楽天も、カナダにある子会社のKobo社に電子書籍事業を行わせることによって消費税を免れていました。さすが、社内公用語が英語の会社はやることも国際化しています。

酒井税理士事務所代表 酒井 勇(税理士登録 第102393号)

住所: 大阪市西区南堀江1-2-6 サムティ南堀江ビル8階
HP: http://www.sakai-tax.jp/

経歴

昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。

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