最近空き家が増えているそうです。総務省がまとめたところによりますと、2013年時点での全国の空き家数は820万戸。このうち、いわゆる「放置された」空き家は4割近くを占めており、5年前と比べて50万戸増えているとのことです。
今は空き家となってしまった家も、もとは誰かのマイホームだったはず。家を買うというのはそう簡単なことではないはずなのに、せっかく手に入れたマイホームが空き家になってしまうのはなぜなんでしょう?
高度経済成長時代には、“賃貸→マンション購入→庭付き一戸建て“という理想の住み替えパターンというものがあり、多くの方がこの方程式に乗っかって「夢の庭付き一戸建て」を手に入れてきました。家賃を払うのはもったいないし、なにより一戸建ては資産として残せますからね!
ところが平成の世の中になると状況が変わってきました。確かに大都市の高級住宅地であれば一戸建ては「資産」と言えるかもしれませんが、人口が減少する地方や郊外のマイホームは、
という状況にあります。「子どもが引き継いで住む」「売ればそれなりの金額になる」からこそ「資産」といえるのですが、これでは相続した子どもにとっては資産というより「負債」なのかもしれません。
ところで今回は固定資産税のお話しなのですが、この税金は土地と建物の価値に対して課税されます。ということは、解体費用を払ってでも家を壊してしまえばその分固定資産税は安くなるはずです。
しかし、現行の固定資産税は「住宅の敷地であれば税額を6分の1(200㎡以下の部分)に減額する」という住宅優遇措置があります。ここでいう「住宅」とは人が現に住んでいるか否かを問いません。この優遇措置があるために、今にも倒れそうな空き家であっても取り壊さずに放置する(更地にすると土地の固定資産税額が6倍!になってしまうから)ケースが増えているのです。
放置された空き家があると、誰もいないのでごみが不法投棄されたり、放火・不法侵入などの犯罪を誘発したりする原因にもなりかねません。また、台風や地震などの際に倒壊する危険もあり、近隣住民に危険や迷惑を及ぼす可能性があります。
そこでこのような危険な空き家については、昨年11月に自治体が立ち入り調査や解体の指導等を行うことを認める法律ができ、また平成27年度の税制改正大綱では固定資産税の住宅優遇措置の対象から外すことも決まりました。
これらの措置によって空き家の有効活用が進むかどうかはこれからの様子をみなければ分かりません。しかし、夢のマイホームの末路がやっかいもの扱いというのはなんとも切ないものです。これからの時代、マイホームは資産ではなく車などと同じ耐久消費財と割り切って考え、最後どのように処分するかまで考えてから買う必要があるのかもしれませんね。
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昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。