ネット上には「個人事業主ならココまで経費で落とせる!」的な記事があふれています。たしかに「ほんまのとこ、どこまで経費で落とせんねやろ?」という疑問はみなさんもお持ちのことと思います。
これについては通達で判断基準が明示されているのですが、そんな専門的な判断は税理士にまかせて頂くとして、まずは単純にその経費が「常識で考えて」業務に使ったといえるかどうかで判断して頂くと大きな間違いはないと思います。
ところが、世の中にはなんでも「常識だ」と言えば通ると思われている方もおられるようで、今回はそんな声の大きな方の主張のなかでも、特に「ワイルドやなぁ」とある意味感心させられたものをご紹介したいと思います。
マンション1棟を一括借り上げしてもらっている、不動産賃貸業を営む個人事業主さんの裁判記録からのピックアップです。この方の主張はすべてが大胆で本当はそのすべてをご紹介したいところなのですが、紙面の都合でその中のベスト2をご紹介いたします。
主張1
・バイクは業務用に使っていたのでその軽自動車税を必要経費に認めろ!
→ このバイクは不動産業務専用の資産として購入した。大地震が発生し賃貸物件が被害を被った時に現場へ急行するためには、道路が陥没するなどの理由により乗用車を用いることができない場合が想定される。その際には自動二輪車が必要になると考えて購入したのである。
主張2
・海外旅行は業務視察のために行ったのだから必要経費に認めろ!
→ 賃貸物件の空室率を減らすことに腐心していたものであるが、長年の経験から、トイレ、浴室及び洗面所をいかに配置するかが入居者にとって魅力的な部屋になるかを決するという結論に達した。そして、外国のホテルや客船の部屋ではどのようになっているのか興味を持ち知りたいと思ったので海外旅行に行ったのである。帰国後、その成果は活かされ、部屋のリフォームの際に、この海外旅行の際に獲得したアイディアを活かした部屋のレイアウト造りがされ、その結果賃貸物件の空室率は低いままで維持できている。
(以上、地裁の判決文より抜粋)
どうです?これほぼ原文で私の作文じゃないですからね。特にバイクが必要だという理由を初めて読んだときには鳥肌が立ちました。バイクの軽自動車税は250㏄超でも年4,000円。それを必要経費に認めさせるためにここまで想像力をふくらませることができるのか!と度胆を抜かれました。
海外旅行の方ですが、判決文で確認したところ、そもそもこの旅行後にマンションの改良工事等がされた形跡はないようです。まあ、改良工事がされていたとしてもこの主張は認められないのですが、やっていないことなんかすぐにバレるのに堂々とここまで言い切れてしまうところが驚きです。
ちなみにどちらの主張も認められることはありませんでした。当たり前ですね。本当に業務上必要な費用であれば必要経費として認められるのですが、なんでも理屈をつければ通るというものではありません。みなさんは「常識」を働かせて判断してください。
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昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。