平成25年1月には10,000円前後だった日経平均が、この原稿を書いている平成26年11月時点では17,000円を超えるまでに上昇しました。2年で約70%のアップです。残念ながら私は株取引をやりませんので全く恩恵を受けることはないのですが、医師のみなさまの中にはホクホクの方も少なくないのではないかと思います。
株価が上がった時点でその株式を売却すれば、売却益(売値-買値-売却手数料)に対して所得税と住民税合わせて20.315%の税金がかかります。売却益が100万円なら20万3,150円。もしも売却益が1,000万円なら203万1,500円ですからなかなかの負担です。そこで、今日は特別に株式の譲渡益に対する課税逃れの方法をみなさまにお教えしましょう!?
唐突ですが、シンガポール人が日本の株を売って利益を得たらどこで課税されると思いますか?株式の譲渡益に対して課税することができる権利は、株を売った人の居住国にあります。したがって、この場合には日本では課税されずシンガポールで課税されることになります。ところが、シンガポールには株式の譲渡益に対する税金はありません。つまり、このシンガポール人は日本株でいくら儲けても1円の税金も納める必要はないのです。
株式投資をされる方にとっては天国のような国ですね。うらやましいので自分もシンガポールに移住して株式投資をするぞ!と考えた方がいたとします。さて、この方も同じように株式譲渡益の課税から逃れることができるのでしょうか?
その答えは...「Yes」です。所得税法では個人を「居住者」と「非居住者」という2つのカテゴリーに分けているのですが、「非居住者」に該当すると、日本での株式譲渡益に対して日本で課税されることはないのです。
「非居住者」かどうかの区分は国籍を問いません。つまり、外国人であっても日本に住所がある人は「居住者」になります。逆に日本人であっても日本に住所がない人は「非居住者」となるのです。
もちろん、半年やそこらシンガポールに住民票を移せば良いとか、そんな単純な話ではありません。所得税法でいう「住所」とは「個人の生活の本拠」をいいます。したがって、住んでいる場所という意味だけでなく、その方の職業や配偶者等の居所、資産の所在などの状況から総合的に判断されます。
かこの記事をお読み頂いている先生方の場合には、家族ともどもシンガポールに移住し現地の病院に勤務するというところまでしなければ「非居住者」になることはできません。しかし、ひところ世間を騒がせた「村上ファンド」の村上さんなどのようなファンドマネージャーの場合には、海外でもできる職業ですので後は本人の意志だけで比較的簡単に「非居住者」となることができます。(実際に村上氏はシンガポールに移住されています。)富裕層の方の場合も、日本にいなければならない職業についているのでなければ「非居住者」になるハードルはそれほど高くありません。
実際、多額の含み益をかかえた株式を保有している富裕層がシンガポールなどに移住し、「非居住者」になってから株式を売却することで売却益に対する課税を逃れている事例が増えています。合法ではあるのですが、本来国庫に入るべき税収が入らないというのは国としては問題です。
そこで最近財務省が言い始めたのが「出国税」です。どのような税金かといいますと、「非居住者」になってしまったらもう手出しができないので、「居住者」が「出国」するときに株式の含み益に対して課税してしまおう、というものです。含み益に対して課税するということは、まだ儲けてもいない利益に対して課税するということですから問題もあるのですが、そんなことにかまってはいられないほど、海外移住→株式売却というスキームが世の中にはびこっているということなのでしょう。
この出国税、政府は平成27年度税制改正に盛り込み、早ければ平成27年度からの実施を見込んでいるそうです。
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昭和44年11月29日生。大阪府堺市出身。神戸市外国語大学中国学科を卒業後、特殊鋼の専門商社に入社する。そこで香港現地法人立ち上げに関わった経験から中小企業の財務会計に興味を持ち税理士資格取得を志す。その後会計事務所勤務を経て平成20年4月に酒井税理士事務所を開業する。“税に関する情報をわかりやすい言葉でお伝えします!"をモットーに、情報を必要とする方に有益な情報を届けることに注力し、現在では多数メディアにも掲載され活躍されておられます。